映画版「ザ・シンプソンズ」声優変更を考える会より皆様へ

2007年8月15日、ザ・シンプソンズMOVIEの声優が変更されると発表されてから始まった抗議活動も約半年がたちました。

先の見えない活動をあきらめずに継続することはとても困難なことでしたが、それを可能にさせてくれたのは「シンプソンズ」という作品が笑いと一緒に送り続けていた製作者のメッセージ、そして、15年間シンプソンズ一家・スプリングフィールドの住民を愛情深く真剣に演じつづけてくれた声優の皆さんのおかげだと思います。

単に表面的に笑えるだけの作品ならばここまで話題が大きくなり、我々もここまで長い期間、抗議活動を続けることはできなかったと思います。良い作品には作り手の魂が込められています。それは受け手である消費者にもしっかりと伝わります。いい加減に吹替えされた作品、出演者が貶す作品をありがたがるほど現代の消費者は愚かではありません。私たちは「TVのオリジナル声優さんが吹替えしたシンプソンズ」が本当に良い作品だと思えたから、色んなことを犠牲にしてでも本気で抗議活動を行うことができました。本気だからこそ多くの人たちがこの抗議活動に賛同してくれたのだと思います。

シンプソンズだけでなく映画は単なる「商品」ではありません。映像・声・音楽の全てが複合して初めて「作品」として完成するのです。どれか一つが欠けただけでそれはもう「完成品」ではなくなるのです。だから、(客を増やすため?の)話題づくりだけのために主人公であるシンプソンズファミリーの吹替え声優を変更したのは、主人公の顔を描きかえるくらい重大な間違いであったと断言いたします。

アメリカでシンプソンズMOVIEを製作した監督や原作者は「ファンが喜ぶ作品を作るために、ファンを試写会に招いて反応をみた」とコメントをしています。日本でも同じことが必要だったのではないでしょうか?世間の反対を押し切ってまで上映したタレント吹替え版はそれだけの価値があったのでしょうか?なぜ、需要の高かった字幕版は2館でしか上映されなかったのでしょうか?20世紀FOXにもそれなりの理由と事情があったのでしょう。しかし、消費者はその理由と事情に付き合ってお金を支払うほどお人よしではありません。評価に値しないもの、欲しくない物にはお金は払いません。評価に値するもの、欲しい物であればいくらでもお金を払います。

私たち消費者は映画会社を介してしか映画を観る事ができません。だからこそ、映画会社には消費者の声に耳をかたむけて、消費者がお金を払うに値するものを提供してほしいのです。
二度と今回のような「誰も幸せになれない悲劇」が起きないように、今後、吹替え版を製作する映画会社には「声の演技」の価値をしっかりと理解して、吹替え声優の人選を慎重に判断をしていただきたいと思います。

そして、20世紀FOX映画にはDVD発売後でも映画第2弾上映前でもいいから、いつか、ファンが真に求めている「TV声優吹替え版ザ・シンプソンズMOVIE」をフィルムにして、大きなスクリーンで上映してくれることを強く望みます。本来、映画は映画館の大きなスクリーンで観るものです。映画会社が映画館の大きなスクリーンを否定し、家庭のテレビでDVDを見ることを勧めることはあってはならないと思います。大きなスクリーンで「TV声優吹替え版ザ・シンプソンズMOVIE」を上映すること、それこそが、15年間シンプソンズを支え続けた声優さんと、映画館でシンプソンズを観れなかったファンに対する償いだと思います。 そんな中、ミスタードーナツのCMがオリジナル声優の大平透さんと堀絢子さんの吹替えで放送されたのは本当に嬉しい出来事でした。映画のキャンペーンにタイアップしたCMで、映画のタレント吹替えではなくTV版の声優吹替えを決定するには様々な迷いや障害があったと思います。それでもファンの気持ちを大事にしてTV版の声優吹替え起用していただいたミスタードーナツに深く感謝いたします。タレント版を見ず、字幕版を見に行く事ができないファンでも、ミスタードーナツのキャンペーンでシンプソンズMOVIEが日本で公開された嬉しさを体感することができました。これこそがファンが望んでいたシンプソンズMOVIEの正しい形だったと思います。改めてミスタードーナツの大英断に感謝いたします。ありがとうございました。

最後に、シンプソンズ声優変更の抗議活動を一緒に頑張ってくれた全ての皆さんに感謝いたします。一人では解決できないこと、一人では続けられないことなど様々な障害がありました。しかし、同じ志しを持つ仲間が集まり、お互いの出来ることを行い、苦手なことを助け合うことで、一滴の水が川となり海に注ぐように大きな力となって声優の皆さんをスプリングフィールドに戻らせてあげることが出来たと思います。
シンプソンズと声優の皆さんのために一緒に頑張ってくれた皆さん、本当にありがとうございました。そして、これからも一緒にシンプソンズと声優の皆さんを応援してください。ありがとうございました。

声優変更を考える会メンバー一同